🗓 2022年01月27日

会津の大手お菓子屋「太郎庵」のオーナーは柴五郎の大ファンである。昨年顕彰会で青森むつ市を訪れた時に柴五郎の生家跡に会津若松市長揮毫の顕彰碑建立除幕式に遭遇した。ただむつ市長列席の正式の除幕式の1時間ほど前についたので顕彰碑には白い幕が張られていて見ることができない。太郎庵の奥さんは、「主人が大ファンなので写真を撮っていきたい。」と頑張る。それを聞きつけ、除幕式の準備を進めていた実行委員会の人が「せっかく会津から来たのなら。」と言って特別に白い布を外してくれた。それで私たちは新しくできた顕彰碑の前で集合写真が撮れたのである。光栄にもむつ市長や斗南会津会の方々よりも早く顕彰碑を見ることができたのである。

今年に入り、お菓子を太郎庵に発注をしたので奥さんが集金に来た。当然話題は柴五郎の話になり「柴五郎についてはある明治人の記録という本が有名であるが、詳しい最高傑作は中井けやき先生の「明治の兄弟」ですよ。」と教えてあげた。それで私が使っている「日本の古本屋」の通販サイトで検索した。そうしたら欲しいというので、書棚の奥まったところにあった私の蔵書を探し出して代金を頂きそれを持っていってもらった。

そして昨日、注文していた本が届いた。

昨日は外出中で不在票を持って郵便局受け取りに行った。配達時間から1時間ほどしかたっていないので郵便局に戻っていないかなと思いつつ行ったのだが不思議にも戻っていて窓口で受け取った。あれ中井けやき先生の本とボリュームが違うなと思ったが、とりあえず持ち帰った。

家に帰りレターパックを開けてみた。やはり中井けやき先生の「明治の兄弟」ではなかった。送られてきた本の著作者は「菊地寛」であった。「明治の兄弟」というタイトルは中井けやき先生のだけではなかったのかと初めて気が付いた。

そこで発注履歴を確認したところ「明治の兄弟 菊地寛」と明記してある。明らかに私の発注ミスである。

同封されていた書店に電話して「中井けやきの明治の兄弟があるのなら交換して頂けないか」と 交渉したが交換はできないという。当然であろう。返品を受け付けていたら仕事が一向に進まない。

それで、菊地寛の「明治の兄弟」を読んだ。あらすじは熊本出身の兄弟の話である。兄は軍人として身を立て郷里から弟を呼んで勉学の機会を与えていた。その時、西南の役が起こり、血気盛んな兄は弟を無理やり引き連れ西郷隆盛のところへ行った。西郷隆盛が国に尽くすのはいろいろな方法があるといい弟は薩摩を離れたが、兄は西郷隆盛の軍に身を投じた。弟は司法省に入り判事まで上り詰めたが、血気盛んな兄は西南戦争をかろうじて生き延びた後、自由民権運動の闘士となり、反政府的な行動をとり続けた。兄の許嫁(いいなづけ)と結婚するよう兄と母から懇請された弟は結婚して幸せな家庭を築くのだが、兄は官憲から追われる日々であった。

初めての国政選挙が行われた時に兄は自由党から立候補し当選した。演説や文章がうまく自由民権運動の活動家として名をあげていたからであった。兄弟愛と子供を思う母親とそれを取り巻く女性たちの愛の対比が何とも言えない短編小説であった。

柴五郎の世界からとんでもない世界へ飛んでしまった。これもひとえに発注時の確認ミスである。これを女房に言えば「タバコを吸ってるから、頭がボーとしているのよ。」と小言を言われるに決まっている。

(文責:岩澤信千代)