🗓 2021年07月03日
吉海 直人
うどんの日は、必ずしも全国のうどん屋さんによって定められたものではありませんでした。というのも、四国の香川製麺事業共同組合が昭和55年(1980年)に独自に制定したものだからです。どうやらこれは「讃岐うどんの日」ということのようです。では何故7月2日なのでしょうか。それも特別の理由・根拠はなさそうです。ただこの日は七十二候の半夏生にあたるので、讃岐では7月2日にうどんを食べて暑い夏を乗り切るという風習がありました。近畿でよく蛸を食べるのと同じ理由です。
うどんの日があるからには、そばの日もあるだろうと思って調べてみたところ、なんとありませんでした。一番ふさわしいのは、蕎麦が一番よく食される大晦日でしょうが、12月31日は蕎麦の日に制定されていません。日本麺業団体連合会が昭和58年(1983年)に制定したのは、なんと毎月の月末でした。要するに1年に12回もそばの日があるわけです。これは大晦日だけでなく、毎月の月末にも蕎麦を食べてもらおうという業界の狙いがあるようです。ちょっと欲張りですね。
それでも特定の日があった方がいいということで、東京都麺類生活衛生同業組合は10月8日を蕎麦の日に決めました。何故その日かというと、これも単なる語呂合わせです。「十」は「十河」の「そ」で、「八」を無理して「ば」と読めば「そば」になるからです。ということで、蕎麦の日も二種類あることになります。
それ以外に「麺の日」(11月11日)をはじめとして、7月11日は「ラーメンの日」、8月8日は「焼きそばの日」、10月14日は「焼きうどんの日」、10月17日が「沖縄そばの日」、10月25日は「パスタの日」(世界パスタデー)、10月26日が「きしめんの日」、11月3日が「チャンポンの日」と、いろいろな麺にちなむ記念日が並んでいます。そうそう、8月25日はインスタントラーメンの記念日でした。要するに麺の種類によって、それぞれ記念日があるのです。
それだけではありません。さらに「麺の日」から派生して、10月10日が「冷凍麺の日」に制定されました。これは「10」が「れい」(ちょっと苦しい!)で「10」が「とう」という語呂合わせだからです。こうしてみると、何となく10月に記念日が集中しているように思えませんか。それは10月が食欲の秋を代表する月だからでしょう。「きしめんの日」など、ツルツル感を数字の「2」と「6」に込めていますが、2月6日ではなく食欲旺盛な「10月26日」を選んでいます。
ところで、何故7月11日が「ラーメンの日」かというと、これはレンゲを数字の「7」に見立て、箸を「11」に見立てたことによるそうです。かなりこじつけっぽいですね。そのためか、水戸黄門(光圀)の誕生日(寛永5年6月10日)を新暦に換算すると1628年7月11日になるので、その日にしたという説もあります。というのは、光圀が日本で最初に中華麺を食べた人といわれているからです。
その他、「沖縄そばの日」は昭和53年10月17日に、公正取引委員会から「沖縄そば」が正式な商品として承認・登録された日になっています。「チャンポンの日」が11月3日なのは、文化の日に便乗して長崎の食文化はチャンポンから始まったとしたからです(ただし皿うどんの日は決まっていないようです。
極め付けが「カレーうどんの日」でした。そもそもカレーの日が6月2日で、うどんの日が7月2日なので、その延長線上の翌8月2日が選ばれました。これは遅れて平成22年(2010年)に、「カレーうどん一〇〇周年革新プロジェクト」が制定したものだそうです。
そこでカレーうどんの起源(いつ店頭に並んだか)を調べてみたところ、明治37年(1904年)に東京早稲田にある三朝庵という老舗の蕎麦屋さんが、初めてメニューとして提供したとのことです。それが早稲田大学の学生たちに大うけしたことで、全国に広まっていきました。なんとカレーうどんは、うどん屋ではなく蕎麦屋の新商品だったのです。その理由は、うどん屋よりも蕎麦屋の方が、早くにカレーをメニューに取り入れていたからでした。カレーだけではありません。最近は蕎麦屋の出すラーメンも人気です。蕎麦屋の方が商魂逞しいようですね。