🗓 2025年03月22日
吉海 直人
最近スーパーや八百屋に行くと、珍しい野菜や果物が増えていますね。私の若い頃には店頭に並んでいなかったものがたくさんあります。それとは別に、これは野菜なのか果物なのか、なかなか見分けがつきにくいものも少なくありません。もちろん野菜は葉・茎・根が中心で、果物は果実が主体なので、食べる部位の違いによって簡単に区別できます。もっとも、木になったものなのか草になったものなのか判断しにくいものもありますね。バナナ(バショウ科)は木になっているように見えますが、実は木ではなく草の仲間だそうです。
ということで定義を調べてみると、野菜は、
とあります。つまり毎年枯れるものです。それに対して果物は、
です。要するに実がなるまでに何年もかかるのです(桃栗三年柿八年)。
実は植物の中で一番厄介なのがバラ科です。というのもこの仲間は木もあるし草もあるからです。これがミカンならば、どんなに種類が多くても間違うことはありません。ただグレープフルーツは「グレープ」とあるので面倒ですが、これもミカン類の果実ですよね。
それに対してバラ科は単純ではありません。まず木の種類としても、サクランボ・梨・リンゴ・カリン・ビワ・アンズ・モモ・スモモ・アーモンドなどがあります。これはまだいい方で、草に近いイチゴ・ラズベリー・プルーンもバラ科だということ、分かりますか。
問題のスイカ・メロンはウリ科に属しています。そこにカボチャ・マクワウリも含まれますから、少々わかりにくいですね。もっともメロンやスイカは果実の中に種があるので、それなりに納得できます。それに対してイチゴは特殊です。みなさんは表面のぶつぶつが種だと思っていませんか。ところが植物学的にはそれが果実です。わかりにくいのですが、その小さな粒状の果実の中に種が入っているのだそうです。では私たちが果実だと思って食べているのは何でしょうか。これは茎の先端の花床が膨らんだものだそうです。ちょっと俄かには信じられませんよね。
さてここからが本題です。この「イチゴ」や「スイカ」「メロン」は野菜なのでしょうか、それとも果物なのでしょうか。園芸学では植物の特性の観点から「野菜」とされています。あるいは「果菜類」とも呼ばれています。そして農林水産省では「果実的野菜」という曖昧な表現になっているそうです。一方、スーパーでは堂々と「くだもの」として売られています。総務省でも「くだもの」として扱っているそうです。ある意味、学問的に見ると「野菜」、生活感覚では「くだもの」といえます。
最近では野菜と果物という分類以外に、その中間的な呼び方も出てきました。「果菜」もそうですが、折衷案的に用いられているのが「果実的野菜」「野菜的果実」という呼称です。「イチゴ」や「スイカ」は、限りなく果物に近い野菜ということになります。他にパイナップル・パパイヤも含まれます。バナナもこの仲間に入りそうです。
それに対して野菜的果実としては、トマト・アボカドの仲間があげられます。これらは限りなく野菜に近い果物ということです。特に最近のトマトは、甘味の強いフルーツ・トマトとして商品化されており、既に果物の仲間入りしてますよね。それに類するのがパッション・フルーツですが、やっぱり野菜か果物か、すっきりしませんね。むしろザクロに近いかな。名称にフルーツとあるものとして、他にキウイフルーツ・ドラゴンフルーツ・スターフルーツなどもあります。
もう一つ、果物というのはみずみずしいものと思い込んでいるので、クリやクルミなどは木の実ではあっても、果物というイメージはありません。銀杏や梅の実は木の実ですが、やはり果物とは思えません。やっぱり難しいですね。