🗓 2022年05月01日

女房がぽつりと知床の観光船のニュースを聞いて「あそこの観光船でカモメにエサをやったよね。」学生時代周遊券を買って北海道一周をした。有り金がなくなったら帰ろうという全く行き当たりばったりの無計画な旅行であった。学生時代金はなくても時間があった。ユースホテルで知り合った関西出身の学生と一週間くらい経って釧路湿原近くを走っている列車の中でばったり再会したのは驚いた。20日間くらいケンカしながら北海道にいた。生まれも育ちも違う女房とは、その時結婚もしていなかったが、趣味・嗜好が全く異なっていた。私がそばを食いたいと言うとラーメンでないと駄目だと話が一致しない。勝手に帰れと言っても汽車の乗り方もわからない女房は仕方なくついてくる。

知床海岸についた時は夕方であったが、森繁久彌の「知床旅情」の気持ちがひしひしとが伝わってきて感動した記憶がある。当時は世界遺産にはなっていなかったが、層雲峡と知床海岸は旅の思い出に残る圧巻の場所だった。

その場所で、40数年後にこのような不幸が起こるとは。会津地方密着の有名なスーパーマーケットの御曹司が遭難者の中に含まれていたのにはびっくりした。28.9歳の将来のある青年である。結婚して間もなくということでわずかな期間に未亡人が誕生してしまった。面識はないが、父親は私の高校の2年後輩である。一人息子で会社の専務だという。その青年は地元の老舗酒造会社でウイスキー製造を試みていた。将来的には会津経済を引っ張っていくような人材であった。

遺族が安置されている場所の献花台に花を持たずに弔問に訪れた経営者の船で不幸にあった。無線も壊れていた。各種の注意報が出されていた中での出航である。とんでもない会社の船に乗ってしまったもんだ。

ウクライナのプーチンといい、知床の海難事故といい特異なキャラクターの持ち主の為に何故、罪もない無辜の人々が犠牲にならねばならないのだ?日本酒の製造工場でウイスキー製造を夢見た青年の命が何故失われなければならないのだ。あの迂闊な社長の会社が十分な補償金が支払えるのか。法令違反を繰り返した会社に保険金を支払ってくれるのか?まだ10数名の人が見つかっていない。コロナ死と同じように遺族に今生の別れは出来ないのか?事故が起こってしまった後に政治が出来ることは少ない。船舶運航の許可を出す機関が不正を見逃していた点も問題にされている。

いずれにしても有為な青年の死は、お金で償えない莫大な国家的損失であることを肝に銘ずべきである。

(文責:岩澤信千代)