🗓 2023年07月28日
ユーチューブで小林旭の「北帰行」を聞いていたら、この歌にはドラマがあった。
元は失恋の歌だが、戦時下における体制への不満が隠されていた。作詞・作曲者は宇田博という。旅順高等学校の時にメッチエン(女の子)とデートして帰ってきたところを教官に見つけられ退校処分になった。その時に友人に残した歌だったのである。
戦後日本に帰り第一高等学校、東大文学部を卒業した。歌声喫茶で自分の作った歌が歌われていたのでびっくりしたという。宇田は大学卒業後TBSに入社し常務・監査役を務めた。長い間、作者不詳だったが、旅順高校の友人に託した原稿が出て、宇田博が著作者であることが確定された。現在はJASRACの管理下にある。
大志を遂げられず、失望して故郷に帰る敗北者の歌かと長い間思ってきたのだが、旅順高等学校の寮歌として歌われた1番から5番までの歌詞を読むと違った側面が見えてくるという。すなわち戦時下の強権的な圧政の中でのやるせない希望の気持ちが含まれていたのだ。
公的な空間を親族の忘年会に使用したバカ息子に反復して聞かせてやりたい歌である。
(文責:岩澤信千代)