🗓 2019年10月08日

可月亭のコーヒー

 
 八重さんが、終生大事にしていた会津の風景がある。昔は今のようにデジタルカメラもなく、スマホで写真を撮ることもできない時代であった。写真機自体も個人には普及していなかった。そこで、絵葉書がお土産として重宝がられた。西郷隆盛や大久保利通など明治の元勲などの遺墨の絵葉書や昭和天皇の即位の礼やプロレスラーの絵葉書まで幅広く売られていた。

八重さんが終生ふるさと会津を偲ぶよすがとしていた風景の中に「可月亭」がある。庭園は長らく個人所有の為一般公開していなかったが、「可月亭庭園美術館」として2015年から公開されている。

運営されている星野さんは元福島大学副学長で私の大学の先輩である。近くを通りかかったので妻と二人で訪問した。そこで注文したコーヒーが素晴らしかった。写真にあるようにお膳の上にコーヒーセットが載っているのにまず驚いた。次にコーヒーの味に驚いた。学生時代は東京で喫茶店全盛だったので、ブレンドではなくキリマンジャロやブルマンなどのストレートをあっちこっちの喫茶店で飲んで、たわいもないことを友人と話していた。勿論、妻もたまにその中にいたので、コーヒーには一言持っている。濃くないと怒るだけだけど・・・。
酸味とか苦味とかで銘柄とか区別できるのであろうか?最も妻もセブンで買ったコーヒー豆とたまに隣家から珍しいコーヒー豆を頂いたものを飲むくらいだからもっともな話である。エジプトに娘がいる親戚から貰ったエジプトのコーヒー豆はおいしかった程度の味しか本当は私も知らない。学生時代は酸味とか苦味にがみで産地をあてられたのだけれど。

「可月亭」のは、まずお膳に驚き「うまい!」の一言である。コーヒーカップも温められていて、温度がちょうど良いのである。ブレンドだと思うけど、極めて味はまろやかである。奥さんから、コーヒー豆は福島市の有名などこからか仕入れているとか聞いたが、「85度」という温度のことしか覚えていない。何の温度か忘れたが「85度」というのは企業秘密の類ではないだろうか。

会津の3庭園のうちの一つである「可月亭」の庭園を見ながら、おいしいコーヒーを飲むというのは大変至福の時である。また会津でも由緒ある商家(屋号:鍋三本店)の本流である星野先生の大人たいじん大尽だいじん?)の風格もまた格別である。

八重さんの好きな可月亭に「八重顕彰会」の会員になってもらう腹積もりがあったのだが、すっかりコーヒーの旨さに気を取られ星野先生に話を切り出せないで帰ってきたのであった。

(文責:岩澤信千代)