🗓 2024年05月04日
吉海 直人
みなさん、ブロッコリーはお好きですか。栄養満点ということで、最近は人気の食材になっていますね。それにしてもなんだか不思議な形をしているとは思いませんか。一体どんな植物なのかご存知でしょうか。調べてみると、なんとアブラナ科であることがわかりました。アブラナ科の野菜は非常に多く、他にキャベツ・白菜・小松菜・ちんげんさい・ケール・大根・かぶなども含まれています。ブロッコリーはその中ではキャベツに近い仲間とされています。
このキャベツもブロッコリーも外来の野菜で、ヨーロッパ地中海沿岸が原産地です。そのキャベツの仲間のカイラン(芥藍)を改良したものがブロッコリーだそうです。その名称は、イタリア語で茎のことをブロッコといったことによります。私たちが普通に食べている部分は、小さな蕾がたくさん集まった花蕾でした(もちろん太い茎の部分も食べられます)。蕾ですから放置しておくと黄色い花が咲きますが、花も食べられます。
日本に伝来したのは明治以降です。ただしほとんど流通しないまま長い年月が経過しました。家庭の食卓に上がるようになったのは、遅れて第二次世界大戦以後だそうです。それでもなかなか日本人の口には合わなかったようで、消費量はたかが知れていました。ところが昭和50年代になると、ブロッコリーの栄養価の高さがマスコミで話題になり、健康食ブームに便乗して一気に広まっていきました。
なお冬のブロッコリーには、やや紫色がかったものがあります。これはマイナスの変色ではありません。実は紫がかっているのは、抗酸化作用のあるアントシアニン(ポリフェノールの一種)を出しているからでした。それによってかえって栄養価が高くなり、しかも甘くなっているとのことです。ですから是非紫がかったものを選んで食べてみてください。
ところでみなさん、ブロッコリーに似ている野菜を知っていますよね。そうカリフラワーです。これも明治以降に輸入されました。漢字で書くと、ブロッコリーは「芽花椰菜」で、カリフラワーは「花椰菜」となっています。どちらも簡単には読めませんよね。芽と花の部分を食べる野菜がブロッコリーで、主に花の部分を食べる野菜がカリフラワーということでしょうか。このカリフラワーも同じくアブラナ科なので、もともと二つは近似したものでした。DNAはほとんど変わらないそうです。その違いとしては、まず見た目の色が違いますよね。ブロッコリーは緑色で、カリフラワーは白色です。
もちろん食感も違いますが、それよりもカリフラワーは常温で保存がきくのに、ブロッコリーは低温で保存しないとすぐに変色してしまいます。それもあって、ブロッコリーの需要はなかなか伸びなかったのです。ですからカリフラワーの方が、先に食卓にあがりました。昭和30年代(高度成長期)には、ホワイトアスパラガス・セロリと合わせて洋菜の三白と称されていたほどです。
幸い冷蔵庫が普及したことで、今ではブロッコリーの方がカリフワラワーの10倍以上も流通しています。それはやはり栄養価の違いによるのかもしれません。緑黄色野菜であるブロッコリーには、ベータカロチンが豊富に含まれています(カリフラワーの50倍)。各ビタミン類にしても、断然ブロッコリーの方に多く含まれています。栄養価ではブロッコリーがカリフラワーを圧倒しているのです。
もっともそれは生で食べた場合のことです。ブロッコリーは茹でるとビタミンが損なわれるという欠点もよく知られています。その点、カリフラワーは茹でてもビタミンがほとんど損なわれません。そのため畑のレモンとも称されています。要は料理によって使い分けることです。
ついでながら、最近ブロッコリーとカリフラワーを掛けあわせたようなカリッコリーという名の野菜まで登場しています。正式名称はロマネスコ(珊瑚花椰菜)ですが、見た目は珊瑚というよりサボテンのような感じです。今後新しい野菜として皆さんの食卓にもあがるかもしれません。一度食べてみてください。