🗓 2020年09月30日
週刊新潮の記事に目が留まった。内容は以下のとおりである。
東京五輪の競技「段違い平行棒」でチャスラフスカはバーをつかみ損ね落下した。通常なら次の技から演技を再開するところ、失敗した技に再挑戦して成功させた。
その会場にその勇気と気高さに感動した喜多方市出身で25才の大塚隆三がいた。競技が行われた代々木体育館を出ると一目散に喜多方の実家に車を飛ばした。深夜零時過ぎに実家の兄の元へ駆けつけ床の間にある家宝の刀を懇願した。困惑する兄を尻目に「チャスラフスカにあげるんだ。頼む。」といって強引に譲り受け、翌日ベラ(チャスラフスカ)に直接手渡した。日本中のファンから届いたプレゼントは浴衣や扇子などトラック1台分以上あったが、チャスラフスカはその日本刀だけ携え帰国した。この逸話は永田渚左氏の取材によるという。
2016年8月にチャスラフスカは昇天したが、何度も日本を訪れ、東北大震災が起こったときは被災者を励ますボランテイア活動もしたらしい。
「私は東京オリンピックの時に、サムライの刀をもらっています。代々継承されたサムライの魂です。その魂をもらったのだから、私もサムライの子孫です。背くことはできないのです。」
1964年私は当時小学生であったが各家庭にテレビが普及したのは東京オリンピックがキッカケだったと思う。こんな隠れたドラマがあったとは今日週刊新潮の記事を読むまでは知らなかった。「事実は小説よりも奇なり。」である。弟のわがままに従い家宝の刀を譲った兄の姿も素晴らしい。また大塚隆三の直感的な行動も素晴らしいし、サムライの魂を感じ取り祖国に帰ってからも弾圧(旧チェコスロバキア)に負けず筋を通したチャスラフスカもすばらしい人である。当時「東京五輪の名花」といわれたが、体操で祖国のために戦い、そして祖国の民主化のために生涯闘った。
2021年7月開催の「2020東京オリンピック」はどんな奇跡とドラマを生むのだろう。バッハ会長の発言からすると開催への意思は堅いように思う。「人類が新型コロナを克服した記念すべきスポーツの祭典にする。」と再三にわたり表明している。IOC・JOC・東京都が協力して用意周到に準備されると思われるが、日本人を含め世界中に感動を与える祭典開催が待ち遠しい。同時にチャスラフスカが「刀→サムライ」と感じ取った日本古来の「武士道精神」に想いを馳せる必要があろう。
(文責:岩澤信千代)