🗓 2022年07月30日

同志社女子大学特任教授
吉海 直人

今回はみなさんに漢字の読み方クイズを出題します。決して難しい漢字ではありません。読みも日常口にしているものですが、いざ漢字の読みとなると迷うかもしれません。
まずは易しい問題を5問出してみます。是非挑戦してみてください。

 

①予め  ②詳らか  ③強か  ④健やか  ⑤円ら

 

いかがですか。「予め」は「あらかじめ」です。「予て」とあったら「かねて」と読んでください。「予予」は「かねがね」です。「詳らか」は「つまびらか」です。他に「審らか」とも書きます。古典では「つばひらか」でした。「強か」は九州弁の「つよか」ではありません。これで「したたか」と読みます。「強い」は「つよい」以外に「こわい」とも読めます。「強ち」は「あながち」です。なお「健か」も「したたか」と読めます。その縁で「健やか」を出してみました。「や」が入っただけで「すこやか」という読みになります。では「円ら」はどうでしょう。ウルトラマンの「円谷プロ」を知っていれば「つぶら」と読めますね。あるいは「円らな瞳」とあればピンときたかもしれません。これが「円やか」だと「まろやか」になります。漢字の読みは複数あることを承知してください。

では次の5問はどうでしょうか。難易度は前と同じくらいです。

 

⑥挙って  ⑦具に  ⑧徐に  ⑨偶に  ⑩直向き

 

「挙って」は「こぞって」です。これは古語の「こぞりて」から転じたものです。「挙げて」とあったら「あげて」と読みます。次の「具に」は頻出語です。もちろん「ぐに」ではありません。これで「つぶさに」と読みます。「徐に」は「じょじょに」ではありません。「おもむろに」です。意味も「いきなり」ではなく「ゆっくりと」ですが、誤用される率が高いとのことです。「偶に」は「まれに」ではありません。これで「たまに」と読みます。「適に」も「たまに」です。「偶々」は「たまたま」ですね。「直向き」は「ひたむき」です。「直垂」は「ひたたれ」と読みます。簡単そうで難しいですね。

続いてややむずかしい問題を5問出してみます。これが読めれば、あなたは立派な漢字博士です。

 

⑪徒ならぬ  ⑫塗れる  ⑬論う  ⑭渉る  ⑮労う

 

急に難問になった気がしませんか。「徒ならぬ」は「ただならぬ」です。「とならぬ」では話になりません。やや古い言い方のようです。「塗れる」はもちろん「ぬれる」ではありません。これも古い言い方で「まみれる」と読んでください。三橋美智也の「達者でナ」という曲に「わらにまみれてヨ」とありました。「論う」は「あげつらう」です。「相手の欠点を論う」のはよくありません。「諭す」とあったら「さとす」です。「捗る」は「わたる」とも読めますが、ここは「はかどる」と読んでください。「捗々しい」は「はかばかしい」ですね。「労」は簡単な漢字ですが、どう読めばいいのか悩みます。「労う」とあれば「ねぎらう」です。「労る」とあったら「いたわる」と読んでください。これは両方一緒に覚えるのがよさそうです。

似たような問題を5問追加しておきます。

 

⑯恰も  ⑰唆かす  ⑱際疾い  ⑲目眩く  ⑳与する

 

「恰も」は漢字も普段使わないものですね。これは「ごうも」ではなく「あたかも」と読みます。「唆かす」は「そそのかす」です。これが「唆る」とあったら「そそる」と読んでください。「際疾い」はそのまま「きわどい」でいいんです。「目眩く」は目が眩みそうですね。でも「まばゆく」ではありません。文学的に「めくるめく」と読んでください。単独で「眩い」・「目映い」とあったら「まばゆい」です。「与する」は易しそうでなかなか読めません。これは「くみする」です。「与る」とあれば「あずかる」と読みます。

さあ最後の5問です。今度は漢字二字になっていますが、少し易しくなっています。

 

㉑贔屓  ㉒白地 ㉓晩生  ㉔胡座  ㉕幼気

 

「贔屓」はこれで「ひいき」と読みます。「白地」は難問です。もちろん「しろじ」ではありません。これで「あからさま」と読みます。なお「白」には「白す」と書いて「もうす」と読みます。「晩生」は「おそうまれ」ではなく、「おくて」と読みます。ですから「晩い」は「遅い」同様「おそい」と読んでください。「胡座」は「あぐら」ですね。「幼気」は「おさなげ」ではなく「いたいけ」と読みます。
以上25問出題しました。15問以上正解なら合格です。日本語は中国の漢字を訓読みしたことで、こんなややこしい読みが生じたのです。