🗓 2019年11月22日

ぼったくりキャバレー

 
 「阪神タイガースと広島カープ」の稿を書いていたら、この稿が思い出されてきた。
それは片方の当事者K君との思い出である。その頃、福富太郎が「キャバレー王」とか呼ばれ、キャバレーという居酒屋の一種が流行っていた。私たちは学生の身分であったが、新たらしもの好きで、何カ所か飲みに行った。普通はワイワイガヤガヤとスカートの短い若い女性と飲むのだが、その店は違った。K君と私以外は他の客がいないのである。
 女性の従業員は断りもせず、酒やつまみをオーダーする。

いざ、勘定して帰ろうとして、請求書を見て我々は仰天した。76000円であった。二人とも一万程度しか持っていない。二人合わせても2万にも満たない。あまりにも高いので明細書を出してくれと要求した。「冷ややっこ6000円、コーラ6000円」確かに足すと総額は76000円になる。金のないことを告げるとマネージャーらしき人が現れ、「学生証を置いていけ」という。仕方なく我々は学生証を預けてその店を退散した。

2か月くらいたって、K君が飲み代のツケを払いに行こうと言う。どうしたのと聞くと
 「アルプス山脈の山小屋で夏休み中アルバイトをしていた。」二人で池袋のその店に払いに行った。レジは女性であったので安くならないかと交渉していたら、周りに目つきの悪いお兄さんが二人立っていた。これはやばいと二人して支払いを済ませて学生証を回収して一目散に退散した。その代金はアルバイトで苦労して得た大事なお金なのにK君は割り勘にせず一人で払った。

その「領収証」は今後の浮ついた自分の戒めの為、大事に保管していた。ところが父が上京した時に私の机の引き出しにあったのを偶然に見つけた。ひと月の仕送り以上の金額を浪費しているので大目玉を覚悟したが、父はニヤニヤするだけで一言も叱らなかった。
 私の人生、失敗は数多くあるがその中の大いに反省すべき1コマである。

(文責:岩澤信千代)