🗓 2020年07月25日

(民友新聞社 2020.7.22 掲載)

東京の目白通りに面して「椿山荘ちんざんそう」がある。そこの昔の住人は明治の元勲山縣有朋である。総理大臣も経験した藩閥政治の長州閥・陸軍の元締めである。邸宅は高台にあり、眼下に早稲田大学がある。早稲田の創立者大隈重信は政敵である。朝な夕なに早稲田の校舎を睨み「また大隈が青年を集めて、よからぬことを企んでいる。」と忌ま忌まし気につぶやいていた。
植田リサ支店長はその早稲田商学部出身である。明治以来、長らく中央官庁や政府系機関は東大をはじめ官立大学の独占が長いこと続いてきた。日銀の支店長に私学出身でしかも女性の支店長が誕生したことは時代の変化だろう。
私の友人は国家公務員上級試験に受かり、当時の通産省が第一志望で面接を受けたのだが採用されず、東京都庁に入った。彼が良く言っていたことは「官庁採用の面接の時に質問を受ける。どこの出身かと聞かれると私立大学出身は早稲田とか慶応とか答える。ところが東大出身者は法学部とか経済学部と学部名を答える。出身校を選別しないと言ってもそこでお里が知れてしまう。」と嘆いていた。
そういう長い旧帝国大学の支配が続いていた「官」の世界であるが数年前、外務次官に私学出身の杉山次官が誕生した。また最近文科省でノンキャリアの次官級審議官が誕生した。山縣有朋が私学を目の敵にしていた時代から隔世の感がする。山縣有朋が戊辰戦争当時、越後戦線で河合継之助など奥羽越列藩同盟にてこずり、とても信頼していた同じ長州出身の時山直八が戦死したときに読んだ有名な歌がある「あだ守る 砦のかがり 影ふけて 夏も身にしむ こしの山風」
さて、今の私学の躍進を見たら、山縣有朋はどんな和歌を作るだろうか?安倍総理の後任に法政大学出身の苦労人である菅義偉よしひで氏が注目され始めた。一方で同じく後継者と目されている岸田氏は早稲田出身であるが人気が広がらない。

(文責:岩澤信千代)