🗓 2022年07月28日
毎年、この季節になると一番の御馳走は何といってもナス漬である。この季節しか食べられないし、どこのスーパーに行ってもお目にかかることはない。仙台に勤務中にいつでも売ってる「仙台ナス」を食べたことがあるが、会津の小茄子の漬物とはナスの種類も味も違う。
国産黒毛和牛のステーキは、お金を出せば美味なものを食べられるが、私にとってこの時期の会津のナス漬には劣る。
私の学費を出してくれた祖父の兄の病気見舞いに横須賀に行ったことがある。その時大叔父は夏ではなかったが「ナスの粒がらし漬けが食いてえな。」であった。その時の会話が最後であった。会津に帰り、持ってきたいなと思ったが、何分季節が違った。その前の大叔母(大叔父の妻)の病気見舞いに行ったときには「柳津のかつ丼が食べたい。」と言った。大叔父夫婦は会津に帰省すると決まって柳津温泉の旅館に宿泊するのが常だった。柳津の食堂で食べたかつ丼の味が食が細った死期間近の食欲の対象だった。
人間は子供のころ食べた味が恋しくなるという。「おふくろの味」という言葉がある所以だろう。
願わくば私の死期はナスが食える夏であって欲しいと思っているが、どうなることやら。
(文責:岩澤信千代)