🗓 2022年01月16日

初めまして。
「風刺画を通して歴史を知る」という活動をしております若林悠と申します。
この度、近著「風刺画が描いたJAPAN」の宣伝をさせていただけることになりました。
風刺画は上からの指示でなく、下々の民衆が自発的に描いた自分たちの本音です。
日本における風刺画は幕末の江戸に風刺錦絵として誕生し、美人画と役者絵がほとんどだった錦絵の世界に割り込んで一大ブームを巻き起こしましたが、その政治的主張には歴然とした傾向がありました。
「親幕府、反維新」もしくは「親会津、反薩長」です。
江戸の民は政権獲りのためには手段を選ばない尊王攘夷派を嫌い、また、ひたすら恭順に努める徳川慶喜にももどかしさを感じて、熱烈に会津を応援しました。
百五十種以上、数十万枚(おそらく百万枚超え)出されたと言われる江戸の風刺画の中に、会津が悪いと述べたものは一枚もありません。
江戸の民衆は一致して幕府存続を願いました。
錦絵は江戸、大阪、京都の大都会を中心に刊行されていましたが、では上方(大阪、京都)の状況はどうだったのかというと、尊王攘夷派びいきではあるものの、その熱意、つまり発行数で江戸に圧倒的に負けていました。
鳥羽伏見の戦い後は、維新政府へのゴマすりのために薩長土肥を讃える作品が量産されてもおかしくないはずですが、実際にはわずかです。
売れないものは量産されないのです。
歴史は勝者が語りますが、「維新英雄伝」の陰に隠れてほとんど放置されてきた風刺画をめぐる動きは、実際にはその時何があったのかを伝えてくれます。
「風刺画が描いたJAPAN」は黒船来航から太平洋戦争勃発までの近代日本の姿を、世界中の風刺画を俯瞰してまとめた初めての通史ですが、リアルタイムの認識といわゆる現代の一般常識が最も激しく乖離するのが幕末史です。
近年は明治維新に物申す書籍も次々に刊行されるようになり、状況が改善されてきましたが、絵で見る一次資料としての作品群もどうぞご確認なさってください。
とはいえ、本書は全ページフルカラー、大判サイズ(B5)、224ページの豪華本なので税込み4180円です。
買って下されば大変有難いのですが、高額なので、図書館で借りて読んで下さるのも大歓迎です。
ただ、どこの図書館でも入荷があるわけではありませんので、発行(昨年11月25日)から2~3カ月以内くらいの間に地元の図書館にリクエストして下さい。
その間に利用者からの要望があれば、入荷されるかと思います。
では、ここまで読んで下さり有難うございました。
1月13日の「事務局だより」に戊辰戦争の見本が掲載されていますので、ご覧くださいませ。

投稿者:若林悠