🗓 2022年06月11日
吉海 直人
みなさん、6月21日は何の日だかご存知ですか。はい夏至ですね。では夏至とはどういう日のことでしょうか。これもご承知のように、一年で一番昼の時間が長い日のことを意味しています。天文学的には太陽黄経が90度になる時のことです。それが起こる日のことを夏至と定めているのです。ただしそれは北半球だけの話です。当然ですが南半球では、逆に一年で一番昼の短い日になっています。丸い地球は不思議ですね。
原則として、夏至は6月21日に固定されていますが、4年に一度の閏月の年には1日プラスされるので、6月22日になります。その夏至の反対は冬至ですね。ではどれくらい時間が違うのでしょうか。その前に、1年で昼と夜の時間が同じになるのが、春分の日と秋分の日の2日です。
春分の日からだんだん昼が長くなって、その頂天に夏至があるわけです。冬至と比較すると、なんと四、五時間も昼が長くなっています。ちなみに2018年の大阪の夏至は、日の出が4時44分で日の入が19時15分でした(昼が14時間29分)。
それだけではありません。夏至になると、日の出・日の入りの方角が最も北寄りになります。そのため三重県にある二見浦の夫婦岩では、この夏至の前後だけ二つの岩の間から太陽が昇ります。当然、その時期には観光客で賑わうとのことです。
ちなみにシェークスピアの喜劇に「A Midsummer Night’s Dream」がありますね。その「Midsummer」が夏至のことだということで、坪内逍遥はこれを「真夏の夜の夢」と訳しました。ところが作品を読むと、五月祭の前夜(4月30日)のできごととなっていることから、「真夏」(夏至・盛夏)では季節的におかしいということで、土居光知や福田恒存などは「真」をとって「夏の夜の夢」と訳しており、それが現在一般的になっているそうです。みなさんはどちらで習いましたか。
「Midsummer」といえば、ヨーロッパでは人間の性欲が一番かきたてられる日とされているそうです。それはすなわち、男女の出会いを促進する日でもありました。そういった意味を有する「真夏」がいいのか、時期的に「夏」の方がふさわしいのか、難しいところです。
ついでですが旧暦を見ると、夏至のはじまりには「及東枯」と書かれています。何と読むかわかりますか。これは「なつかれくさかるる」と読みます。「及東」だけで「夏枯草」(漢方薬の靫草の古名)のことを指しています。寒い冬至の頃に芽を出し、夏至の頃に枯れたように見えることからそう命名されたようです。ですから冬至の項には反対に「及東生」(なつかれくさしょうず)と書かれています。
ところで冬至の日には冬至かぼちゃを食べる風習がありますね。春分の日・秋分の日にはぼたもち・おはぎを食べます。では夏至には何を食べるのでしょうか。実は夏至だけは、何かを食べるということが定まっていないようです。というのも、かつて夏至は田植えのシーズンでした(ちょうど梅雨の時期です)。ですから忙しすぎて、食を楽しんでいる暇はなかったのです。
むしろ田植えが終了する半夏生(7月2日)の頃に、労働の疲れを癒すもの・栄養のあるものを食べたようです。特に関西では蛸の旬ということもあって、好んで蛸の料理が食べられました。夏至から小暑(7月7日)までの期間も夏至と称しているので、蛸こそが夏至に食べられる食べ物といってもよさそうです。
冬至かぼちゃに対抗して、夏至すいかも悪くないなと思いましたが、既に7月27日がすいかの日に決まっていました。それならメロンはどうかと思って調べてみると、6月6日がメロンの日になっていました。残念!